ドメインネーム基礎知識ドメインネーム基礎知識ドメイン管理を行う目的とポイント

ドメインを安全に運用し企業活動に活用していくためには、ドメインの更新対応に留まらない広範囲のドメイン管理が必要です。この記事では、企業がドメイン管理を行う目的から、ブランドや知的財産の保護を含めたドメイン管理の方法、自社で管理を行う場合のリスクについて解説します。あわせて、ドメイン管理事業者を活用したリスク対策も紹介しています。

1.ドメイン管理とは?

ドメイン管理とは、独自ドメインなどの登録と維持・管理を行うことを指します。

「ドメイン」の基礎知識

・ドメインとは

「インターネット上の住所」のことを指す。以下のように使用され、下線部分がドメインと呼ばれる。

 メールアドレス:xxx@example.co.jp
 WEBサイトのアドレス:http://www.example.co.jp/
 

・独自ドメインは企業やサービスの「看板」でもある

看板が認知、信頼されていればWEBサイト上での情報発信も有益になる。

ドメインの構造や、TLD(トップレベルドメイン)の種類などについて詳しくは、「ドメインネームとは?」をご覧ください。

申請後もトラブルなくドメインを使い続けるためには、定期的なメンテナンスを含めたドメインの管理が必ず必要になります。

 

2.ドメイン管理を行う目的とは?

ドメインの活用は、製品・サービス関連のWEBサイト運用をはじめとする企業活動と密接に関わっています。これらを含め、企業がドメイン管理を行う目的について解説します。

①取得したドメインを問題なく維持・運用するため

ドメイン管理の目的は、ドメインをトラブルなく使い続けられるよう維持・運用することや、運用上の不備・トラブルがあった時に不利益が大きくならないよう対処をすることにあります。ドメイン管理を行うことで、ドメインの活用に関連した企業活動を支障なく続けることができます。

・発生しうるトラブルの具体例
ドメインの維持・運用に支障を与えるトラブルには以下のような例が考えられます。

・悪意に基づくドメイン移管の通知を見逃し、ドメインが乗っ取られてしまう
・乗っ取りによりWEBサイトでドメインが使えなくなり、情報発信の機会を失う
・第三者に自社名やサービス名と同じドメインを勝手に取得されてしまう

ドメイン維持・運用に関するトラブルについて詳しくは後述しますが、ドメイン管理の大きな目的はこれらのトラブルを防止することにあります。トラブルが発生した場合に備え、管理担当者の教育やドメインに関する業務の適切な引き継ぎ、関係部署の協力体制を整えることもドメイン管理に含まれます。
 

②企業ブランドの保護戦略のため

企業が行うドメイン管理は、ただドメインが問題なく使えるよう維持する以外にも「ブランド保護戦略」のためという目的があります。独自ドメインは製品やサービス、ブランドの「看板」でもあり、それを保護・維持するためにも管理を徹底する必要があるのです。

ドメインの期限切れや乗っ取りなどを予め防ぐ適切な管理がされていれば、ブランド毀損のリスクも減り、企業の信頼性を保ち続けることができます。


 

3.なぜドメイン管理をする必要があるのか?

ここでは、ドメイン管理を行う必要があるのか、また、ドメイン管理が重要な課題になるのかを具体的に解説します。

①ドメインには有効期限があるため
ドメインは一度取得すればずっとそのまま使えるという訳ではなく、有効期限があります。ドメインは、毎年〜数年に一度の更新手続きが発生し、その有効期限までに更新ができなければ、コーポレートサイトや製品・サービスサイトなどのWEBサイトが閲覧できなくなる場合があります。

この他にも、一度有効期限が切れてしまったドメインが悪意ある第三者によりフィッシング詐欺に使われるケースもあり、企業の信頼性低下につながる可能性があるのです。

ドメインの更新漏れは、企業全体のブランド戦略や売上げなどに大きな影響を与える重大なトラブルです。そのため、適切な更新管理を行うための体制の構築は必須と言えます。多くのドメインを保有している場合には、各ドメインの有効期限と共に、更新要否の予定などの状況も把握しておく必要があります

②ドメインは知的財産の一つでもあるため
ドメインはただのインターネット上の住所というだけでなく、現在は自社の知的財産の一つとみなされています。こうした観点からみてもドメイン保護のため常時 、知的財産の侵害対策も含めた適切なドメイン管理を行わなければなりません。

複数のドメインを取得している企業において、一部の部署、担当者のみが管理を担う体制では更新業務やブランド保護、知的財産の保護を含めた多方面の対策に限界がある場合もあります。

管理が適切にできていない状態で一度知的財産が侵害されると、後に重大な損失にもつながります。裁判に発展した場合など、侵害が起きた後の対処に多大なコストがかかる可能性もあり、知的財産としてのドメインの管理は特に重視しなくてはなりません。

 

4.ドメイン管理を担う部署とは?

ドメイン管理を行う部署は主に以下の3つです。

部門・部署 ドメイン管理への関わり方
知的財産部門 ドメインをはじめとしたWEBサイト上の商標、コンテンツなどのブランド保護全般
情報・システム部門      ドメインの取得からネームサーバー申請、更新など技術的な業務。ブランド保護などには直接関わらないことが多い
広報・マーケティング WEBサイトのシステムやコンテンツの更新を主導
 

この他にも、「法務部門」「経営企画」などの部署も関与してドメインの取得手続きから管理を担うケースもあります。ドメイン管理への関わり方は上記の通りですが、社内で明確なドメイン管理の仕組みが整っていないと、更新漏れなどのトラブル対応が後手になりがちです。ドメイン管理を主導する部署がどこであっても、社内で各部署の対応範囲やドメイン運用のマニュアルを整備しておくことが望ましいでしょう。

なお、ドメインの乗っ取りなどのリスクに備えるには、知的財産部門とその他の部署対応も含めた協力が必要となります。
 

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ドメイン管理体制の作り方

ドメインに関するブランド保護のための施策と社内の関連部門を含めた体制づくりについて解説しています。

5.自社でドメインを管理する場合のリスク

ドメインは自社で維持・運用などを行って管理する場合と、専門のドメイン管理事業者に依頼し提供サービスの範囲で登録や更新・トラブル対応などを代行してもらう場合とがあります。ここでは、自社でドメインを管理した場合に発生しがちなリスクについて解説します。

①意図せぬドメイン失効のリスク

更新が適切に行われず、ドメインが失効してしまうリスクです。自社でドメイン管理を行う場合、最もありがちなリスクでもあります。社内でドメイン管理の体制が整っていなかったり、管理マニュアルが担当者間で引き継がれていなかったりといった実態があると生じやすく、WEBサイトの停止など重大な障害にも発展します。

社内のどの部署の誰が更新の対応をするかといった、ドメイン更新を含めた運用のマニュアルやルールが明確化されていないと、こうした不慮のトラブルが起きやすくなります。

②サイトが乗っ取りに遭うリスク
悪意ある第三者の介入でドメイン乗っ取りが起きるリスクです。①のドメイン失効リスクなど基本的なトラブル防止対策をしても生じる可能性があるリスクと言えます。

例えば移管申請を受けた際、ドメイン管理担当者が対応方法を理解していないと、悪意ある第三者から移管申請があった時に「不承認」とせず誤って承認してしまい、ドメインが乗っ取られるリスクが生じます。こうした乗っ取りのリスク対策として、専門事業者へドメイン管理を依頼する方法が考えられます。

 

6.自社だけでは万全の対策が難しい、ブランドが毀損されるリスク

第三者によるドメインの悪用は、重大なブランド毀損に発展するリスクです。

特に、ドメイン管理をする上で知的財産部門と商標権侵害などの法的な対応を担当する部署との協力体制が築かれていない場合、ドメインの悪意ある使用への対策も後手に回ってしまいます。こうしたリスクに対応するには、ブランド毀損の可能性を見越したドメイン管理体制を作るといった対策が必要です。
 

7.ドメイン管理の体制を整えリスクを減らす対策

第三者からの乗っ取りや詐欺・模倣といったドメインに関するトラブル対策は、自社だけで全て行うことは困難です。トラブルが生じるリスクを減らすには、ドメイン管理事業者と共に「ドメイン管理体制」を見直す必要があります。ここでは専門の管理事業者の支援を受けながらドメイン管理体制を整え、ドメインに関するトラブルのリスクを減らす対策について紹介します。

①複数のドメイン保護(必要なドメイン保護)
類似ドメインを第三者が取得し、フィッシングに利用したり、品質が低い製品を類似ドメインのWEBサイトで販売されたり、といった事態を防ぐための対策です。

具体的には、自社のブランディングに影響しそうなドメインを予め保護目的で複数取得しておき、第三者に使われないようにする方法があります。

例:保護目的で取得する「domainname.jp」の類似ドメインの例

TLDが異なるドメイン

・domainname.com
・domainname.co.jp
・domainname.biz
・domainname.tokyo

domainnameの一部の文字列が異なるドメイン

・domainnam.jp(eがない)
・domainnamme.jp(mが多い)
・domainame.jp(nがない)

海外の企業に類似ドメインを取得されないため、「domainname.us」などのccTLD(国別コードトップレベルドメイン)を保護する場合もあります。ただし、ブランディングに影響するドメインを全て保護しようとすると対象のドメインが数百以上になることも珍しくありません。ドメイン保護にかけられる費用にもよりますが、どこまで保護するかの最低限のラインを専門の管理事業者に相談しながら決めておくことも重要です。
 

②使われているドメインの調査

ドメインの調査は、商号や主要商標が第三者のドメインとして使われていないかチェックするための対策です。「知らない間に知的財産が侵害されていないか」「ブランドが毀損されていないか」の実態を明らかにしてから、ブランドに対する影響度に応じて個別の対策を検討します。

ドメイン調査と精査の手順

①商号や主要商標を対象に、完全一致や類似した文字列でどれだけのドメインが登録されているかチェック

②登録されている完全一致・類似ドメインがインターネット上でどう運用されているか調査

③運用され方に問題があるか、どの程度ブランディングに影響しそうか危険度ごとに分類

④特に危険度の高いものから警告など個別の対応を行う

問題があるWEBサイトで一致ドメインや類似ドメインが使われており、警告をしても効果がない場合は個別の係争に踏み切らなければならない場合もあります。こうした事態を防止するためには、ドメイン管理事業者のアドバイスを参考に、ドメインに関するポリシー制定などの対策を取ります。

③知財部とその他部署の連携体制を作る

乗っ取りや詐欺への利用など、ドメインに関するブランドの毀損リスクを未然に防ぐ対策として、知的財産部門とその他の部署の連携体制を作るという方法があります。

更新期限切れやブランド保護に関するトラブルを問わず、ドメインに関する問題が発生した時にどの部署が対応し、どう連携して対処するべきか明確化できていれば、被害の拡大を抑えることにもつながります。

情報・システム部門、広報・マーケティング部門、知的財産部門など、それぞれの部署がドメインに関するリスクに対しては横断的に対応できるよう、以下のような共通の課題をピックアップしておきましょう。

・現状ドメインのトラブル対策で何ができていて何ができていないのか
・どの部署がどのトラブルに対応するのか、決まっている/いない部分はどこか
(技術的な対応をする部署は決まっているがブランド保護の対応部署は決まっていないなど)
・いざトラブルが起きた時に対応が遅れそうな部分はどこか
・ドメインに関する各種リスクにどの程度の理解度があるか

上記でピックアップした課題から、対策が足りていない部分を明確にします。その上で基本的には知的財産部門が主導しながら、それぞれの部署が責任を持って対処すべき範囲・役割を決めて協力体制を作ることが望ましいでしょう。ドメイン管理体制を築くところまで対策できていない、それぞれの部署の理解度が足りていないという場合、ドメイン管理事業者によるサポートを受けながら連携が可能な土台作りを進めていく選択肢もあります。
 

ドメインネームの管理

④更新や侵害対策のルール整備
ドメインの更新やブランド侵害について判断に迷う部分をなくすため、現在使用または保護目的で保有しているドメイン管理に必要なルールが明記されたポリシー(方針)を策定しておくという対策です。

部署ごとでドメインに関する見解が分かれないようルールをいつでも参照できるようにすることで、判断ミスによるトラブルの発生や被害の拡大を防ぐ効果があります。

策定するポリシーの例

管理ルールに重点を置いたポリシー              ドメインに関する管理は一括で行うべきで、更新や移管の通知が埋もれていたとしてもカバーしてくれる管理業者を使っていくことを記載
保護ルールに重点があるポリシー 事業展開国において、特に企業名・ブランド名と一致するドメインは自社で保護するとルールに記載
維持ルールに重点を置いたポリシー 終了したブランドやサービスのドメインについても、廃止をするか否か、および廃止のタイミングを検討することをルールに記載

どのようなリスクが発生しやすいかは企業ごとに異なるため、知見のあるドメイン管理事業者のアドバイスを参考にしながらポリシー策定で重点を置くポイントを検討すると良いでしょう。

 

8.まとめ

ドメインはただ取得・登録すれば半永久的に利用できるという訳ではなく、継続的な更新作業をはじめとする維持・運用が必要となります。ドメインは製品・サービスなどの「看板」の役割だけではなく、広報やマーケティングなど多方面の企業活動と密接に関わるため、自社のみでドメイン運用やトラブル防止対策の実施が難しいのが実態です。

特に、ブランド、知的財産保護の対策については、情報・システム部門だけでなく知的財産部門や法務部門、広報・マーケティング部門などの横断的な連携が必要です。自社だけで漏れのないドメイン管理を実現するノウハウがない、という場合は、専門のドメイン管理事業者の活用も視野に入れる必要があります。

必須であるドメイン更新対応をはじめ、ブランド保護に支障がある第三者のドメイン活用状況の調査、全社的なドメイン管理ルールやポリシーの策定などは、ドメイン管理事業者のサポートを得ながらリスクマネジメントを実施することができます。企業の信用低下や重大なブランドの毀損を防ぐためにも、ドメイン管理事業者と共に、適切な管理体制の構築が求められます。


 
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