ドメインネーム基礎知識ドメインネーム基礎知識統一早期凍結システム(URS)の統計と判例

統一早期凍結システム(URS)の統計

大量の新gTLDの登場を受け、新たな商標保護策の一つとして、従来からある「UDRP=Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy(統一ドメイン名紛争処理方針)」に加え、「URS=Uniform Rapid Suspension System(統一早期凍結システム)が導入されました。

これまでに、各仲裁処理機関が受付けたURSの申立て件数と裁定結果の統計は、下記の通りです。

FORUM
(全米仲裁協議会)
ADNDRC
(アジアドメイン名紛争解決センター)
申立件数 392件 30件
裁定結果 ドメイン凍結 363件 23件
申立て取下げ 1件 6件
棄却判定 28件 1件

(2015年12月末時点)

URSは、下記の3つの要件を明白に簡潔に記載することで、時間をかけずにスピーディーに判決を得ることができます。

  • 対象となっているドメイン名が、申立人の有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  • 相手方が、そのドメイン名を登録する権利または正当な理由がないこと
  • ドメイン名が不正な目的で登録かつ使用されていること

ですが、最後のは判例にある通り、UDRPで進めていく方がいい場合もあります。
マークアイは、UDRP、URSとも豊富な実績があります。
自社のケースは、請求がそもそも可能なのか、UDRP、URSどちらで請求すればよいかといったお悩みや疑問点がありましたら、こちらよりお問い合わせください。

統一早期凍結システム(URS)の判例

判例1:申立人が明白に立証し、凍結に成功したケース

事件概略:

申立人は、全世界的に知られている航空会社であり、その社名を商標登録していた。
また、申立人は、その商標をTMCH(Trademark Clearinghouse)に登録していた。

一方、相手方は、その商標と同一の新gTLDを取得し、更にウェブサイトを立ち上げていた。
申立人はFORUM(全米仲裁協議会)に申し立てを行い、相手方は答弁書を提出した。

審査員は、申立人がURSの3つの要件を明白に立証しているため、ドメイン名の凍結を行うという裁定を下した。

判決理由:

申立を立証するための3つの要件について、以下のように審査員は判断した。

  • 対象となっているドメイン名が、申立人の有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること
    申立人が世界各国で対象商標の権利を証明したことにより、申立人が保有する商標と一致するドメインである。
  • 登録者(相手方)が、そのドメイン名を登録する権利または正当な理由がないこと
    対象の商標はTMCHに登録されていたため、相手方はドメインを取得する際、他者の商標権であることを認識することができた。
    相手方は、「新規に事業参入したのだ」と申し立てを否認したが、相手方は多くの著名商標を含むドメイン名を登録しており、他の商標権者からも申立てがある状況であった。
    そのため、第三者に属する商標権であると知ったうえで、ドメインを登録していることから、悪意にある登録である。
  • ドメイン名が不正な目的で登録かつ使用されていること
    相手方のウェブサイトより、販売を目的にドメインを登録したものとみなせることから、悪意のある使用である。

以上の通り、申立人は、3つの要件を明白に立証したと審査員は判断し、該当ドメインについて有効期限まで凍結することを命じた。

判例2:申立は一度棄却されたが再控訴することで、凍結に成功したケース

事件概略:

申立人は、全世界的に知られている高級スポーツカーやレーシングカーを製造している自動車メーカーであり、その社名を商標登録していた。

一方、相手方は、その商標と同一の新gTLDを取得し、更にウェブサイトを立ち上げていた。

始めの申し立ての際、申立人はFORUM(全米仲裁協議会)に申し立てを行った。
相手方は、準備中のウェブサイトを証拠として提出し、その商標名をもつ車の愛好家のためのコミュニティサイトであること、全てのページに申立人とは無関係であり更新されたものではないことを免責事項として表示することとして、ドメイン名の登録や使用に悪意の意図がないことを主張した。

結果、第一審(パネリスト1名)では、申立人が、相手方がドメインを登録する正当な権利がないことと、悪意による登録または使用であることの二つを十分に立証していないことを理由に、申立人の請求は棄却すると判断した。

申立人はその裁定を不服とし控訴を行った。
その際、申立人・相手方とも更なる資料の追加提出等はなく、第一審で提出された申立書と答弁書のみで審査を行った。
結果、控訴審(パネリスト3名)では、申立人がURSの3つの要件を明白に立証しているため、ドメイン名の凍結を行うという裁定を下した。

判決理由:

申立を立証するための3つの要件について、以下のように控訴審は判断した。

  • 対象となっているドメイン名が、申立人の有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること
    申立人が世界各国で対象商標の権利を証明し、更に自社のウェブサイトでもその商標名が使用されていることを明らかにしたことにより、申立人が保有する商標と一致するドメインである。
  • 登録者(相手方)が、そのドメイン名を登録する権利または正当な理由がないこと
    相手方は、インターネットサービスプロバイダであり、Eコマースを含めたサービスを提供している。そのEコマースは、申立人の商標や製品に関連する他のサイトへリンクするパーキングサイトの運営であった。
    また、そのサイトでは、申立人の競合他社の商品も販売していた。
    相手方は、申立ドメイン名を使用して積極的な商標活動は行っていないと主張したが、他のUDRPの判例にある通り、ドメイン名をパーキングサイトやアフィリエイトサイトに使用することは、非営利目的での使用とは言えない。
    特に、申立人の競合となる他社製品へと誘導されるリンクが張られている場合は、誤解を与える転用のため不当な使用であると言える。

    また、相手方は申立人よりその商標名を含んだドメインの登録や使用を許可されていないことから、相手方はドメインを保有する正当な権利を有していない。

  • ドメイン名が不正な目的で登録かつ使用されていること
    相手方は、第三者の商標であることを知ったうえでドメインを登録していること、また、商業ウェブサイトに使用していることから、悪意のある使用である。

以上の通り、申立人は、3つの要件を明白に立証したと審査員は判断し、該当ドメインについて有効期限まで凍結することを命じた。

判例3:申立人が立証に失敗したケース

事件概略:

申立人は、中国でインターネットでの商取引を行うサイトを運営している著名な会社であり、その社名を商標登録していた。また、申立人は、その商標をTMCH(Trademark Clearinghouse)に登録していた。
但し、その名称は、物語のキャラクターとして一般に認知されているものである。

一方、相手方は、その商標と同一の新gTLDを取得し、更にウェブサイトを立ち上げる予定でいた。

申立人はADNDRC(アジアドメイン名紛争解決センター)に申し立てを行い、相手方は答弁書を提出した。
最終的に、審査員は、申立人がURSの3つの要件を明白に立証していないことを理由に、申立人の請求は棄却すると裁定を下した。

判決理由:

申立を立証するための3つの要件について、以下のように審査員は判断した。

  • 対象となっているドメイン名が、申立人の有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること
    申立人が世界各国で対象商標の権利を証明したことにより、申立人が保有する商標と一致するドメインである。
  • 登録者(相手方)が、そのドメイン名を登録する権利または正当な理由がないこと
    相手方は、物語のキャラクター名としてその名称を用いて、個人のウェブサイトを構築する予定であったが、商標登録は行っていなかった。
    そのため、相手方がドメインの正当な権利を保有しているとは言えない。
  • ドメイン名が不正な目的で登録かつ使用されていること
    相手方が意図していた使用は、物語のキャラクター名を使用したウェブサイトであるため、不正な目的であるとはいえない。
    また、申立時点では、ウェブサイトは未完成であったため、インターネットユーザーに申立人との誤認されるような、商業上の利益を目的とした使用とは言えない。

    したがって、申立ドメインが悪意によって登録および使用されているという申立人の立証は明白ではない。

結果、第3の要件立証に失敗したため、相手方にドメインが戻った。
尚、申立人は、UDRPにて再度申立手続を行い、ドメイン移転判決を勝ち取っています。